2015年3月30日月曜日

木造打ち放しCLTの存在感

本年の耐震博(ナイス主催)で圧倒的な存在感を示した展示がCLT(クロスラミナティンバー)の実大モデルでした。CLTは平成25年12月20日に日本農林規格(JAS)を取得した、直交集成版で、木材、建築業界から最注目を浴びる最新の木質材料の一つです。厚みが150㎜のCLTで構成された床、壁、天井の木材質量感は圧巻されます。木材の使用材積量だけならログハウスも同じでしょうが、コンクリートに代わり木材を打ち込んだような圧密感がCLTにはあります。
国産材振興の具体的施策として、木材利用ポイントが開始された平成25年頃から、国産スギの積層板であるJパネルが日本製エンジニア―ドウッドとして、人気を高めています。工業化木材の代表品種である合板も、根太レス構法用途に厚手化が進むなど木材製品の用法開発は止まることがありません。他にも集成材、LVL、OSBなど木材を徹底的に加工する技術の多くは海外から輸入されてきました。
 木材製品製造に傾けられた情熱は、製品を使用した木造建築の生産者に引きつがれます。価値のある木材が期待される使用寿命を全うする期間の劣化対策を100%実行するビルダーと、メンテナンスの責任意識が北米の住宅寿命を担保しているといえます。
 スギの学名はクリプトメリアジャポニカ。日本の固有種であるスギはCLTの需要をまかなう十分な蓄積量が存在します。CLTの建築物が普及することでこれまでの木造建築物耐久性を概念を大きく変えるパワーを感じました。


2015年3月20日金曜日

住宅瑕疵保険次の課題は蟻害免責

このほど住宅瑕疵担保履行制度に関する検討報告書が公表されています。住宅瑕疵保険の義務化が始まった平成21101日から平成2612月までの間におよそ250万件の保険契約が締結されました。そして保険事故として保険金が支払われた確定件数は1800件となっています。事故率に換算すると1万分の7.2件となります。
 住宅瑕疵保険の責任保険期間である10年を迎えてはいないため暫定的な事故率であるとしても、保険的には大層優れた実績です。姉歯事件を奇禍とし瑕疵担保履行法は施行されました。昨今欠陥住宅という言葉があまり聞かれなくなり、住宅品質の底上げ貢献したことを、瑕疵保険の保険事故率が証明しているようです。
 しかし住瑕疵保険にも泣き所があり、その一つが蟻害免責とされています。生物損害は住宅生産者が負うべき法律上の賠償責任ではないためとされているからです。そこで防蟻業者が施工する防蟻工事にシロアリ保険を付帯して蟻害リスクをカバーする仕組みが採用されています。シロアリ保険の事故率は約1000分の2ほどあり、地盤保証や完成保証など住宅保証分野の中でも事故率の高い分野となっています。
 建築基準法では「防腐防蟻の有効な措置」と定められていますが、実際の現場ではその他雑工事扱いされ、防蟻工事の施工品質は深く問われません。俳句の季語にもなっている春から夏のシロアリ群飛期となると防除業者が大忙しとなり、問題解決とは程遠い業界環境がまかり通っています。防蟻の業界のおかしな慣習の一つが「再施工保証」と呼ばれるものです。保証内容はシロアリを駆除と予防工事の役務保証に限定され、被害木の交換ような賠償は行いません。シロアリ業者の生物損害に対する諦め感が「再施工保証」に現れているようです。生活者の望みは蟻害発生防止であり、シロアリ無償再施工に有難味を感じていません。冒頭の報告書では拡大余地の大きな「リフォーム瑕疵保険」と「中古住宅瑕疵保険」への蟻害担保と商品開発について強く提言されています。瑕疵保証の一環として蟻害を見直す好機であると思います。



住宅瑕疵担保履行制度のあり方に関する検討委員会 報告書 (案)
 平成 27 年 2 月 26 日
より抜粋

(2)ニーズに応じた保険商品の開発 保険商品の開発・改定にあたっては、消費者や事業者のニーズについて調査・分析を 適切に行い、その結果を踏まえつつ、検討を進めていく必要がある。具体的には、以下 のような新たな保険商品の提供について検討を行うほか、保険期間や保証内容の見直 し、保険検査の一層の合理化等についても検討を行うべきである。 ① 白アリ食害を補償する商品の検討 事業者等のニーズに対応し、白アリの有無を簡便かつ効率的に検査できる機器、 及び既存住宅売買瑕疵保険における白アリ食害を補償する商品の開発に向けた検討 を継続すべきである。









2015年3月18日水曜日

株価の次は住宅ストック資産価値


 ITバブル以来の株価上昇を受け、輸出企業を中心に久々の大幅ベース
アップ回答も聞こえてきているやよい3月です。
 2011年12月に8434円であった日経平均株価は3年後の2014年12月に1万7459円
まで値上がりし、時価総額は251兆円から520兆円に増加しました。
 昭和から平成に元号が変わる頃のバブル経済と呼ばれた時代は株価以上に
不動産が高騰しました。不動産価格指標を測る住宅年収倍率というものがあります。
 東京都で分譲される平均的なマンションが年収の何倍で買えるかを示す指数です。
 1990年の住宅年収倍率は18倍にも達したことがありました。
 今回のアベノミクスの特徴は金融資産ばかり過熱して、実物資産の代表格である
住宅にはほとんど恩恵は回ってきていない点です。
 国土交通省の発表資料から宅地資産と住宅ストック資産が公表されています。
 統計を見ると宅地資産こそ599兆円と何とか世界第三位の面目を保ってはおりますが、
住宅ストック資産額は344兆円で思いの他に低く、戸建住宅に至っては1住宅あたり
683万円の低評価に留まっております。
 そろそろいくらなんでも低位に留め置かれたきた実体資産にも春風は吹かんものか
田舎の生家を相続した長男はつづくづく思う次第です。